被相続人の土地取得費用の負担を認めて寄与分を認めた事例【大阪高決平成27年3月6日】

弁護士篠田大地

  • 1 寄与分が認められた事例

    一般に、遺産分割において寄与分が認められることは難しいと考えられています。

    今回は、寄与分についてのいくつかの主張が問題となった事案で、そのうちの一部が認められた事案をご紹介します。

  • 2 事案の概要

    (1)当事者

    当事者は、平成11年4月に死亡した被相続人と、相続人として、長女(抗告人)Xと、二女の子(相手方)Y1・Y2がいました。法定相続分は、Xが2分の1、Y1・Y2が4分の1ずつでした。

    (2)遺産

    遺産としては、不動産(土地建物)があり、現在の遺産総額は789万5110円でした。

    (3)認定事実

    認定された事実は以下のとおりです。

    昭和24年ころ  実家建物を被相続人の夫であったCが購入し、Cの生前はCと被相続人が同居した。実家建物の敷地である実家土地は借地。
    昭和54年6月  被相続人がCからの相続により実家建物を取得
    昭和54年10月 被相続人は、実家建物をDに賃貸するとともに、抗告人の住所近くに転居
    昭和58年5月  被相続人は実家土地と道路土地を地主から購入。
    不動産購入に伴い、申立人の夫であるBが債務者となり、銀行から700万円を借り入れる(第1次ローン)。約定返済額は月8万3000円。
    昭和62年9月  Bが債務者となり、銀行から500万円を借り入れる(第2次ローン)。このとき第1次ローンは完済。約定返済額は月6万円。
    その後第2次ローンは完済
    平成5年当時、被相続人の収入は、月23万4500円。一方、支出は月数20万円程度。被相続人の銀行口座から住宅ローン返済額相当の金額が定期的に払い戻されていた経緯はない。

    Bは、昭和58年当時、会社の代表取締役を務めていた。抗告人は、昭和58年から同社の事務員として勤務して給与を支給されており、平成6年当時は、同社から月額12万数千円の給与を支給されていた。

    (4)寄与分に関する主張

    抗告人は以下のような寄与分の主張をしました。

    ① 被相続人に対する身上監護

    昭和55年に抗告人宅近くに転居してから亡くなるまで約18年間食事の世話をしており、食費として1日1000円を負担していたので、657万円相当の寄与がある。

    ② 実家土地及び道路土地取得費用の負担

    実家土地及び道路土地の取得費用は、昭和58年5月に銀行からB名義で借り入れた700万円(第1次ローン)でまかない、第1次ローンの返済は、Bの経営する会社から抗告人が受け取る給料(月額約12万円)を原資に支払った。
    その後、昭和62年9月に銀行からB名義で500万円を借入れて(第2次ローン)、このころ、この500万円の借入れを原資に第1次ローンの残債務を完済した。第2次ローンも抗告人が同様に返済を続けて、平成6年8月に完済した。

    したがって、実家土地及び道路土地の取得費用に充てられたローンの返済額については、抗告人の寄与分として認められるべきであり、その金銭的評価は700万円というべきである。

    ③ 債務の弁済

    抗告人は平成11年6月、被相続人が購入した指輪2個の代金合計70万1200円を支払ったことが寄与に当たる。

  • 3 抗告審の決定

    抗告審は、寄与分を認めなかった原審判を変更し、抗告人の寄与分を700万円と定める決定を行いました。

    上記の抗告人の寄与分に関する判断は以下の通りです。

    ① 被相続人の身上監護について

    上記事実を認めるに足りる的確な資料はない上、仮に、上記事実が認められるとしても、親子関係に基づいて通常期待される扶養の程度を超える貢献があったということはできない。

    ② 実家土地及び道路土地の取得費用の負担について

    被相続人自身の収入で第1次及び第2次ローンを返済することは困難であったと推認されることからすると、第1次及び第2次ローンは、Bあるいは抗告人の資産を原資にして返済されたものと推認される。
    以上によれば、抗告人には、遺産である実家土地の購入に当たって700万円の寄与があったと認めるのが相当である。

    ③ 被相続人の債務の返済

    相続財産への寄与は相続開始までの事情を考慮すべきであることからすれば、相続開始後になされた上記支払をもって寄与の事情とすることはできない。

  • 4 まとめ

    以上のように、本件では、抗告人が主張した寄与分のうち、一部についてその主張を認めました。

    現在、家庭裁判所では、寄与分について、「家事従事型」、「金銭等出資型」、「財産管理型」、「扶養型」、「療養看護型」の類型に分けて主張することが求められています。この類型からすれば、上記①は「扶養型」、上記➁は「金銭等出資型」、上記③はそれ以外ということになるでしょう。

    「金銭等出資型」の場合には、出資したことの立証さえできれば、他の類型と比較して、「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」(民法904条の2)と言いやすいため、本件でも寄与分の主張が認められたものといえます。

    一方、「扶養型」や「療養看護型」の場合には、特に親子間や配偶者間の場合、民法上扶養義務があるため、多少の扶養や療養看護を行っても、「特別の寄与をした」ことが認められにくい傾向があるといえ、本件でも、「扶養型」の寄与分は否定されています。

    なお、上記③は被相続人の死亡後に、被相続人の債務を立て替え払いしたというものですが、本決定でも述べられているとおり、「相続財産への寄与は相続開始までの事情を考慮すべきであ」り、「相続開始後になされた上記支払をもって寄与の事情とすることはできない。」ということで、寄与分は否定されています。