遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますか

1.遺産分割協議は相続人全員で行う

遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ無効となります。
したがって、相続人のうちの一人が海外に居住している場合や、行方不明になっている場合などは、遺産分割協議が難航する場合があります。
ただし、相続人が相続分を譲渡した場合には、譲受人が遺産分割協議の当事者になればよいことになります。
また、遺言による包括受遺者がいる場合には、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有しますので(民法990条)、遺産分割協議に加わる必要があります。なお、遺言による包括受遺者が財産全部につき遺贈を受けたような場合には、結果として、遺産分割協議が不要となる場合があります。

2.相続人全員がいなくても良い場合

①成年後見人がいる場合

意思能力や行為能力に問題がある当事者がいる場合には、別途成年後見等の申し立てを行って、成年後見人を選任したうえ、当該成年後見人が意思能力や行為能力煮に問題がある当事者に代わって遺産分割協議を行うことになります。

②行方不明者がいる場合

行方不明者がいる場合には、別途不在者財産管理人を選定したうえ、不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議を行うことになります。なお、この場合、家庭裁判所の許可が必要になります(民法28条)。

③未成年者がいる場合

共同相続人中に未成年者がいる場合には、未成年者は単独で法律行為をすることができないため(5条)、法定代理人である親権者が未成年者にかわって、遺産分割協議を行うことになります。
なお、親権者と未成年者とが共同相続人である場合や、親権者が複数の未成年者を代理する場合には、利益相反となるため、家庭裁判所に請求して特別代理人を選任する必要があります(民法826条)。

3.一部の相続人が漏れていた場合

遺産分割調停事件において、一部の相続人が当事者から漏れていた場合には、遺産分割調停に漏れている当事者を参加させる必要があります。
具体的には、参加を希望する当事者が裁判所に対して参加の申し出を行うことによる参加方法である当事者参加の方法か、仮に当事者とされていない相続人が参加することを希望しない場合であっても参加させる方法である、当事者である相続人から当事者とされていない相続人に対する引込み参加による方法が考えられます(家事事件手続法258条、41条)。


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