家事従事型の寄与分はどのような場合に認められますか

1 家事従事型の寄与分とは

家事従事型の寄与分とは、被相続人の事業に関して労務の提供を行うことにより認められる寄与分のことをいいます。
夫が農業を営んでおり、妻や子がそれを補助しているなどという場合が典型的な例です。
また、商店などの家業を子どもが手伝っていたなどという場合もこれにあたります。

2 寄与分が認められる要件

この家事従事型の寄与分が認められるためには、以下の点に注意が必要です。
①家事従事が完全に無償である必要はありませんが、通常の第三者とまったく同様の給与を受けている場合には寄与分は認められません。
②労務の提供が一定以上の期間に及んでいることが必要です。
③労務内容がかなりの負担を要するものであることが必要です。
これは、被相続人と相続人間では、扶助義務があるため、扶助義務を超えた親族として通常期待される程度を超えた労務の提供が必要であるからです。
ただし、専業である必要まではありません。
④労務の提供により、相続財産の維持又は増加が図られることが必要です。

3 寄与分の額の算定方法

家事従事型の寄与分の額としては、まずは以下が基準になります。

寄与相続人が通常得られたであろう給付額×(1-生活費控除割合)×寄与期間

通常得られたであろう給付額は、家業と同種同規模の事業に従事する同年齢層の給与額が参考になります。
実際には、賃金センサスその他統計資料等を基準にするものと考えられます。
ただし、被相続人の家業の収益性が著しく低い場合には、実態に即したものとするために、給付額が低く算定される可能性もあります。
生活費相当額を控除するのは、仮に給与を受け取っていなくとも、被相続人から生前に生活費相当額を受け取っていたと考えられるからです。
具体的な控除額は実費が判明すればそれにより、そうでない場合には概算額が定められることもありえます。

上記算定式の結果が一応の目安となります。
寄与分の額は、民法904条の2第2項によれば、「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める」とされていますので、上記の目安額から調整されることもありえます。

なお、家事従事期間が長期間に及ぶ場合などには、上記算定式ではなく、遺産総額全体に寄与相続人が貢献した割合を乗じる形で寄与分を求める審判例もあります。


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