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弁護士
下田 俊夫
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遺産に株式がある場合、相続開始と同時に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の準共有になると解されています(最判昭45.1.22、最判平26.2.25等)。
では、共同相続された株式につき相続開始後に生じた配当金支払請求権(未払配当金)は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるのでしょうか。この点についての判断がなされた裁判例を紹介します。
被相続人Aは、令和2年3月に亡くなりました。Aの法定相続人は、妻X1と、子X2及び子Bの3人でした。
Aは、死亡時、C社の株式2400株、D社の株式300株、E社の株式400株を有していました。Aの遺産であるこれら株式については、遺産分割審判によって、Bがその全部を取得することとされました。
X1及びX2は、当該株式の株主名簿管理人であるY信託銀行に対し、A死亡から遺産分割審判確定までの間に発生した未払配当金のうち自己の法定相続分に応じた金員の支払を求めたところ、拒絶されたため、支払を求めて提訴しました。
X1らは、共同相続された賃貸不動産を使用管理した結果生じた賃料債権は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得すると解されているところ(最判平17.9.8参照)、株式の配当金支払請求権も、賃料債権と同様に法定果実であり、株主総会決議により利益配当額が確定すれば具体的な金銭債権となるから、遺産である株式とは別個の可分債権として、当然に相続分に応じて分割されるというべきであると主張しました。
他方、Yは、共同相続された投資信託受益権は、相続開始後に収益分配金等が発生し、それが預り金として販売会社における被相続人名義の口座に入金された事案において、販売会社に対する預り金返還請求権は、投資信託受益権の内容を構成するものであるから、当然に相続分に応じて分割されることはないと解されているところ(最判平26.12.12)、株式の配当支払請求権も、株式の内容を構成する権利であり、株式の部分的金銭化という性質を有するものである点において、投資信託受益権の収益分配金と同様であるといえるから、当然に相続分に応じて分割されるものではないとして、X1らの請求を争いました。
裁判所は、次のように判示して、X1らの請求を棄却しました。
「配当金支払請求権は、上記のとおり株式(株主権)の内容を構成する剰余金の配当を受ける権利が具体化したものであるから、共同相続された株式につき、相続開始後に配当金支払請求権が発生した場合にも、当該債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の一部が、発行会社等に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することはできないと解するのが相当である。」
(X1らの主張に対し)「配当金支払請求権は、上記のとおり株式(株主権)の内容を構成する剰余金の配当を受ける権利が具体化したものであって、株式の使用の対価として生ずるものではないから、法定果実であるとは言い難い。そして、上記のような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らすと、当該権利の一つである剰余金の配当を受ける権利が具体化した配当金支払請求権は、可分給付を目的とする金銭債権であっても、株式自体と同じく、可分債権には当たらないものと解するのが相当である。」
「本件各配当金の支払請求権は、共同相続された本件各株式につき発生したものであるから、相続開始から遺産分割審判確定までの間に生じたものであっても、当然に相続分に応じて分割されるものではない。そうすると、共同相続人の一部であるX1らは、Yに対し、当然には自己の相続分に相当する金員の支払を求めることはできないというべきである。」
共同相続された株式につき相続開始後に配当金支払請求権が発生した場合、本判決によると、当該未払配当金は当然に相続分に応じて分割されることはありません。
遺産分割にあたっては、遺産である株式だけではなく未払配当金も誰が取得するかについて相続人全員で決めておかないとスムーズに未払配当金を受け取れないおそれがありますので、留意が必要です。