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弁護士
本橋 光一郎
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1 被相続人Aが死亡し、その相続人は、前妻亡Bとの間の子C、及び、後妻亡Dとの間の子(長
男についての代襲相続人Xを含む)6名の計7名であり、その相続分は各7分の1宛である。な
お、Cは、A死亡後に死亡した。そのCの相続人は、前記AとD間の子6名であり、その相続分
は各6分の1宛である。本件の原告(反訴被告)Xは、上記6名のうちの1名(長男の代襲相続
人)であり、本件の被告(反訴原告)Y1、Y2、Y3は、上記6名のうちの3名である。
2 A死亡後で、Cが生存していた時点で、Aの相続人7名間の遺産分割協議書が作成された。そ
の時、Cは、統合失調症で入院中であり、意思能力を有せず、実際上、亡Aの遺産分割協議に加
わっていなかった。その遺産分割協議書面が作成された後にCは死亡した。
3 上記分割協議により、Aの主要な相続財産(賃貸不動産を含む)は、X、Cを除いた他の5名
の共同相続人が取得することとされた。そして、賃貸不動産の賃料については、(X、Cを除い
た)他の5名の共同相続人間で分配してきた。
4 上記遺産分割協議に基づき、相続人らの相続税申告が行なわれ、上記協議書による各人取得額
に応じた相続税額の納税をした。
1 Xの請求(本訴)
相続開始から遺産分割審判確定までの間に賃貸不動産の収益をY1Y2Y3らを含む5名にて
分割・収受したため、Xは、本来受けるべき賃料債権の共有持分6分の1の金額を受けられず、
それにつきY1Y2Y3に対し不当利得返還請求権を有するのでその支払を求める。
2 Y1Y2Y3の請求(反訴)
Y1Y2Y3は、無効な遺産分割協議に基づき相続税申告により過大な相続税を納付をしてい
るのに、過少な相続税しか納付していないXに対しその差額分につき不当利得返還請求権を有す
るのでその支払を求める。
本件の控訴審判決は、一審(高松地裁)判決と同様であって、その判断は次のとおりである。
1 Xの本訴請求について
本件遺産分割協議は無効である(別件訴訟で確定している)ので、遺産分割審判確定に至るま
での間は、未分割の状態であったものである。未分割時の賃料債権は、共同相続人は法定相続分
に応じて分割単独債権として確定的に取得し、後になされた遺産分割の影響を受けないものであ
る(最高裁平成17年9月8日判決)。そうすると、Xは、Yらに対し、未受領の分割単独債権
額について、不当利得返還請求権を有する。したがって、Xの本訴請求を認容した。
2 Y1Y2Y3の反訴請求について
Yらの過納は、無効の遺産分割協議を行なったというYらの行為を原因とするものであるから
Yらの過大納付税額部分を損失、Xの過小納税額部分を利益とみても、これらの間に因果関係を
肯定することは困難であり、自らの行為を原因として過納部分を生じさせたYらが更正の請求を
することなく、本件請求をすることは、信義則に反するとして、Yらの反訴請求(Xに対する不
当利得返還請求)を棄却した。
1 本訴請求について
遺産分割協議が無効とされた以上、後に遺産分割審判がなされ、それが確定となった場合に
は、その間の賃料債権は、最高裁の確定判例(平成17年9月8日判決)に従い、共同相続人は
分割単独債権を有するとされる。当該相続人につき分割単独債権額に不足が生じており、他の共
同相続人が分割債権額を超えて取得した部分については、不当利得返還義務を負うのは、止むを
得ないものといえます。
2 反訴請求について
無効な遺産分割協議の内容に応じて相続税申告をして、結果として納税額が過大になったとす
れば、国税当局に更正請求をするなりして、国との関係において、還付金を請求する等の調整を
すれば足りるのであて、その更正請求もせずに、無効の遺産分割協議の内容に応じて結果的に過
少な納税をした他の相続人に対して、不当利得返還の請求をするのは、信義則に反しており、Y
らの反訴請求が許されないとする裁判所の判断は妥当と考えられます。