借地権の贈与は特別受益になりますか

1 借地権を贈与した場合

被相続人が有する借地権を、生前に相続人の一人に無償で譲渡した場合、借地権相当額が特別受益になると考えられます。
借地権相当額は、路線価図をみれば評価割合が記載されているため、更地価格にこれを乗じて計算することが通常です。

2 土地を底地権相当額で買い受けた場合

ほかに借地権と特別受益との関係が問題となる場合としては、被相続人が借地権を有する土地を、相続人の一人が地主から底地権相当額(土地の価額-借地権相当額)で買い受けたという場合が考えられます。

この場合、相続人の一人が、借地権の贈与を受けたと評価してよいのかが問題となりますが、これは、ケースによります。

相続人の一人による土地の買い受けにより、被相続人が借地権を放棄したといえるのであれば、相続人の一人は、実質的には借地権を無償で得ていたと評価され、借地権相当額が特別受益になると考えられます。

一方、相続人の一人による土地の買い受け後も、被相続人がそのまま借地権を有していたというのであれば、特別受益の問題は生ぜず、借地権が遺産として残ることになります。
なお、この場合に、被相続人が借地料や更新料を未払いの場合には、これら借地料や更新料が相続債務となり、相続人間に承継される可能性もありえます。

借地権が存続していたのか、それとも放棄されたのかについては、事実認定の問題ですが、建物の所有関係や利用関係、賃料の支払いの有無などが考慮要素になると考えられます。
具体的には、相続人が土地を取得後も、被相続人に対し、賃料を支払っている場合などには、特別受益には当たらないことが多いといえそうです。

3 実際の審判例

被相続人が有していた借地権付建物に相続人の1人が住んでいたところ、相続人の1人が地主との間で、借地契約を締結し、相続人は被相続人になんらの対価も支払わず、被相続人は異議を述べなかったという事案について、被相続人から相続人に対して借地権の贈与があったと認めた審判例があります(東京家審平成12年3月8日)。
この事案では、被相続人において、借地権の贈与を受けた相続人に対し、他の相続人より遺産を多く取得させる合理的事情もないとして、持ち戻し免除の意思表示も否定しています。

4 特別受益額について

特別受益額の算定は、相続開始時が基準時であるため、借地権の評価額も、相続開始時における借地権の評価額になるものと考えられます。


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