土地や建物の無償使用は特別受益になりますか

1 土地の無償使用が特別受益になるか

被相続人の土地上に相続人の一人が建物を建築して無償で居住していた場合、特別受益になるでしょうか。

この場合、被相続人から相続人の一人に対して、土地に使用借権が設定されたと考え、使用借権相当額が特別受益であると評価される可能性があります。
使用借権は、借地権と異なり、借地借家法の適用がなく、第三者への対抗力や、解除の制限などがないものですが、使用借権により、他人所有の建物が建っていると土地の売却が困難になるため、土地の価格が一定程度(1から3割程度)減価して評価されます。

そこで、この減価分を使用借権相当額と考え、使用借権の設定により、相続人の一人が使用借権相当額を特別受益として取得したと評価される可能性があります。

なお、使用借権相当額ではなく、地代相当額が特別受益である旨主張されることもありますが、地代相当額を遺産の前渡しとして持ち戻したとは考えられないことから、地代相当額が特別受益とは認められないことが通常です。

2 建物の無償使用が特別受益になるか

被相続人の建物に相続人の一人が無償で居住していた場合、特別受益になるでしょうか。

この点については、居住の態様で分けて考える必要があります。
被相続人と同居していた場合には、通常は被相続人の財産の減少がないため、特別受益があるとは考えられません。
特に、同居において、被相続人を療養看護していたなどという場合には、相続人が利益を得ていたとも考えられず、この点からも特別受益とは考えられません。
一方、被相続人と同居せずに使用していた場合には、使用借権相当額の特別受益が認められる場合もありえます。

なお、この場合も、賃料相当額については、土地以上に遺産の前渡しという要素は薄いため、特別受益になる可能性は低いと考えられます。

3 持戻し免除の意思表示

土地や建物の無償使用が特別受益であっても、持戻し免除の意思表示が認められる場合もあります。
特に、被相続人が老後の生活の面倒を見てもらうために、相続人の一人に建物を建築してもらったとか、同居したなどという場合には、持戻し免除の意思表示があったものと取り扱われることも多いものと思われます。

4 特別受益額の算定

特別受益の基準時は、相続開始時であるため、土地建物の無償使用についても、相続開始時が基準となります。
すなわち、相続開始時における不動産価額に、使用借権の割合を乗じた額が、特別受益になると考えられます。


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