【相続法改正前】遺留分減殺請求を受けた場合、一部の財産のみ価額弁償することは認められるでしょうか

1 一部の財産のみ価額弁償することはできる

遺留分減殺請求を受けた場合、一部の財産のみ価額弁償することも認められます。

たとえば、被相続人から不動産、株式等の遺産全部の包括遺贈を受けたが、他の相続人から遺留分減殺請求を受けたという場合に、不動産の持分が共有状態になるのはやむを得ないが、株式だけは価格弁償してすべて手元に残しておきたいという場合、これも認められます。

以下ではこの点を詳しく述べます。

2 遺留分減殺請求権の効果

遺留分減殺請求権が行使された場合、遺贈は遺留分を侵害する限度で失効し、受遺者が取得した権利はその限度で当然に遺留分権利者に帰属します。
したがって、遺留分権利者は、遺留分侵害額について、各相続財産の価額に応じて、各相続財産の一部や共有持分を取得することになります。
上記の例でいえば、遺留分権利者は、不動産の共有持分や、株式の共有持分を取得することが原則になります。

3 価額弁償

一方、民法1041条は、受遺者に対して、現物返還に代わる価額弁償を認めています。
価額弁償を行った場合、遺留分減殺請求権の行使はなかったことになり、対象となる財産は、はじめから受遺者に帰属していたということになります。

4 一部の財産のみの価額弁償

そして、複数の資産の遺贈がなされた場合に、一部の財産のみについて価額弁償をすることも認められると考えられています。
この点について、最判平成12年7月11日は、「受贈者又は受遺者は、民法1041条に基づき、減殺された贈与又は遺贈の目的たる各個の財産について、価額を弁償して、その返還義務を免れることができるものと解すべきである」として、これを認めています。

したがって、不動産や株式など、価額弁償の対象になるものについて、多数の遺贈を受けた場合で、全てについて価額弁償する資力がない場合や、事業承継のために取得した株式など、どうしても遺留分減殺請求されることを望まない財産がある場合には、受遺者としては、一部のみ価額弁償して、目的を達成することが可能です。

5 遺言者における指定権

また、そもそも、遺言者において、遺留分減殺の対象を指定することも可能です(民法1034条但書)。
たとえば、不動産と株式を遺贈する場合に、不動産を先に遺留分減殺の対象とする、などといった定めを遺言にすることも可能です。
したがって、もし遺言者において、そもそも遺留分減殺の対象としたくない財産がある場合には、このような定め方をしておくことも考えられます。
なお、この方法は、あくまで遺留分減殺の順序を定めることができるにすぎませんので、遺留分減殺請求権を行使できなくすることはできません。

6 相続法改正後の遺留分侵害額請求権との関係

遺留分侵害額請求権は、遺留分減殺請求権とは異なり、個別のものに対して行使するものではなく、遺留分権利者から遺留分侵害者に対して侵害額について支払を請求する権利(債権)ですので、そもそも「一部のみについて価額弁償する」というようなことは、想定されません。


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