相続分の指定とはなんでしょうか

1 相続分の指定とは

相続分の指定とは、遺言により、共同相続人の全部または一部の者について、法定相続分の割合とは異なった割合で相続分を定め、またはこれを定めることを第三者に委託することをいいます(民法902条)。

通常は、「甲野春子、甲野一郎、甲野二郎の相続分を各3分の1ずつとする」とか、「甲野春子に遺産の50%、甲野一郎に30%、甲野二郎に20%を与える。」などというように、相続財産全体に対する割合で指定がなされます。

なお、上記以外にもいろいろバリエーションは考えられます。

たとえば、「甲野一郎に遺産の30%を与える。」とだけ書いてある遺言も考えられます。
このような遺言の場合、一郎に30%だけ与えるという趣旨なのか、30%プラス残りの70%の法定相続分も与えるという趣旨なのか、一概には言えず、別途遺言の解釈が必要になります。

また、「甲野春子に遺産の40%、甲野一郎に30%、甲野二郎に20%を与える。」など、合計しても90%にしかならない遺言も考えられます。
この場合には、残りの10%は、4:3:2の割合で分配すると考えるのが通常と思われます。

2 相続分の指定の効果

(1)指定相続分

相続分の指定がなされると、法定相続分に優先して各共同相続人の相続分が定まります。
相続分の指定がなされただけの場合には、各遺産の最終的な帰属先はまだ未確定なため、共同相続人は、指定相続分に基づいて遺産分割をする必要があります。

(2)登記手続

相続分の指定があった場合の登記手続は、
①遺産分割前において指定相続分による共同相続登記をした上で、遺産分割後に「遺産分割」を原因として当該不動産を取得した相続人への持分移転登記をすることも可能ですし、
②遺産分割が終了した後に被相続人から当該不動産を取得した相続人へ直接相続登記をすることも可能です。
通常は、後者によることが多いです。

(3)相続債務

相続債務については、相続分の指定がなされた場合でも、債権者は相続分の指定に拘束されず、法定相続分に従って請求することができると考えられています。
ただし、相続人の内部関係においては、指定相続分に応じた負担割合になると考えられています。
したがって、仮に相続人が法定相続分に基づいて債権者に弁済した場合、後に他の相続人に対し、指定相続分に基づいて求償することは可能と考えられます。

(4)特別受益

他に相続人に対する遺贈(または贈与)がある場合には、相続分の指定により、当該遺贈(または贈与)について特別受益としての持戻しを免除したものと解するのが通常です。

3 相続分の指定の委託

遺言において、相続分の指定を第三者に委託することも可能と考えられています(民法902条1項)。
したがって、「遺産の割合をどうするかは、乙野太郎に一任する。」などと遺言に記載しておけば、乙野太郎が相続分の指定をすることが可能となります。


遺言についてのその他のQ&A