自筆証書の遺言書保管官による相続人等への通知とはどういうものですか

1 遺言書保管官による相続人等への通知制度の趣旨

 2019年民法(相続法)改正に合わせて、法務局における自筆証書遺言の保管制度がつくられ、2020年7月から開始されました。
 自筆証書遺言の内容を実現するためには、まず相続人や受遺者、遺言執行者等の関係者に、自筆証書遺言が保管されていることを知ってもらわなければなりませんし、その関係者がその遺言の内容を知ることができなければなりません。それらを確保するための制度として、遺言書保管官による相続人等への通知制度は設けられたものです。その通知には2種類の通知(「関係遺言書保管通知」と「死亡時通知」)が含まれていますので、以下ご説明いたします。

2 「関係遺言書保管通知」

 遺言書保管官は、請求により次の①②③の交付又は閲覧をさせたときは、法務省令で定めるところにより速やかに関係遺言を保管している旨を全ての関係相続人等に通知することとされています(自筆証書保管法…以下、単に法といいます…9条5項)。
  ①遺言書情報証明書の交付(法9条1項)
  ②関係遺言書の閲覧(法9条3項)
  ③関係遺言書保管ファイルに記録された事項の閲覧(政令9条1項)
 その通知先は、㋐遺言者の相続人、㋑受遺者(法4条4項3号イ)、㋒遺言執行者(法4条4項3号ロ)、㋓省令で定める(上記㋑㋒以外の)関係相続人等(省令48条1項)とされています。
 なお、上記閲覧をした者や遺言書情報証明書を取得した者など、既に遺言書保管の事実を知っている者に対しては、通知を省略することになっています。

3 「死亡時通知」

 準則19条(通知に関する申出)の記録をした場合において、遺言書保管官は、遺言者の死亡の事実を確認したときは、その申請に係る遺言書を保管している旨を当該遺言者が指定した者に通知するとされています(準則35条)。
 なお、遺言者の死亡の事実を把握することが可能となる仕組みの運用は、令和3年度から開始されています。遺言書保管官が「遺言者の氏名」「生年月日」「本籍及び筆頭者の氏名」を市区町村の戸籍部署に提供して、戸籍担当部署から遺言者の死亡の事実に関する情報を取得することができるので、対象者に通知をすることが可能となるものです。

4 上記制度の重要で画期的な意義

 公正証書遺言が存在していても、公証役場では遺言者の死亡の事実はわかりません。また、個人(弁護士や遺言者の知人など)が自筆証書遺言を預かっている場合でも、その個人の保管者には遺言者死亡の事実がわからないまま時が経過してしまうことがあります。
 そうすると遺言者の意思が実現されないまま遺産相続が事実上終わってしまうことも起こり得ます。
 法務局による自筆証書遺言保管制度においては、法務局が市区町村の戸籍部署と連携しているため、遺言者が通知先を指定しておくことにより、遺言者の死亡の際に遺言書保管官から(遺言者が指定していた)通知先に対して、遺言書保管の事実を通知することができます。そうすることにより相続人らの関係者は、遺言書の内容を知る機会が確保され、遺言内容が実現されることになります。
 この通知制度が設けられていることは、法務局による自筆証書保管制度の大きなメリットになるといえます。


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