扶養型の寄与分はどのような場合に認められますか

1 扶養型の寄与分とは

扶養型の寄与分とは、相続人が被相続人を扶養し、被相続人が出費を免れたため財産が維持されたことにより認められる寄与分のことをいいます。

扶養型の寄与分は、被相続人が生活費等の出費を免れたことにより認められるものであり、療養看護型と違って、疾病等は必要ではありません。

2 寄与分が認められる要件

扶養型の寄与分が認められるためには、以下の要件が必要になります。

①被相続人に扶養の必要性があることが必要です。

したがって、身体的または経済的に負担の必要がない被相続人に対し、扶養を行ったとしても扶養型の寄与分は認められないと考えられています。

ただし、扶養の必要性があるかどうかによって、寄与分が認められるか否かの結論が異なることにあまり合理的な理由があるとは思われません。
そこで、扶養の必要性がない被相続人を扶養し、これによって被相続人が出費を免れている場合には、「金銭等出資型の寄与分」として認めることができるものと考えます。

②扶養内容が、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される範囲を超える貢献であることが必要です。

具体的には、扶養義務の範囲を著しく超えて扶養した場合であることが必要です。
したがって、通常、夫婦間での寄与分が認められることは少ないといえます。
一方、被相続人の子数名のうち1人のみが扶養をしていた場合などは、寄与分として認められる場合があります。
なお、子3名がいて、子Aは多額の扶養を、子Bは小遣い程度の扶養を、子Cは全く扶養をしないという場合、子Aのみ寄与分が認められ、子Cのみならず子Bも寄与分は認められないと考える例が多いように思います。

③扶養が無償ないしこれに近い状態であることが必要です。

同居している被相続人から生活費等を取得している場合には、額にもよりますが、寄与分は認められづらいといえます。

④扶養が相当期間に及んでいることが必要です。

3 寄与分額の算定

寄与分額は、相続人が実際に扶養のために負担した金額が基準となります。

仕送りをしていたなどという場合は、仕送り金額になります。
一方、同居していた場合には、被相続人の食費、被服費、光熱費、医療費等の合計額が基準になると考えられますし、相続人所有の不動産に被相続人が無償で同居していた場合には、家賃相当額を計上することも考えられます。

ただし、同居の場合、家計が一緒となってしまって、扶養のために負担した金額を峻別することが困難なこともありえます。このような場合には、厚生労働大臣の定める生活保護基準や総務省統計局による家計調査を参考とする場合もあります。

そして、上記金額から、扶養義務相当部分を控除します。
扶養義務相当部分の計算方法としては、たとえば、実際の支出金額から、相続人の法定相続分を乗ずることが考えられます。
たとえば、3人兄弟のうち1人が全ての扶養を行っていた場合、3分の1を扶養義務相当部分と考え、3分の2を寄与分として考えることになります。

最後に、一切の事情を考慮して調整の上、寄与分額が算定されます。

4 過去の扶養料求償

被相続人の子数名のうち1人のみが被相続人の扶養をしていたという場合、他の相続人に対して扶養料を求める方法としては、遺産分割における寄与分として争う方法と、扶養料の求償審判として争う方法があります。
過去の扶養料については、いずれの方法によって権利行使することも可能と考えられています。


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