財産管理型の寄与分はどのような場合に認められますか

1 財産管理型の寄与分とは

財産管理型の寄与分とは、被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合に認められる寄与分をいいます。

相続人の一人が被相続人の賃貸不動産を管理した場合などが典型例です。
これ以外の例として、被相続人の土地売却にあたり、借家人との立退交渉や、家屋の取壊し、土地の売買契約の締結等に尽力した相続人について、寄与分を認めた審判例もあります(長崎家諫早出審昭62・9・1)。
また、被相続人の不動産に関する訴訟について、相続人が証拠収集に尽力して、勝訴の結果を得た事案について、寄与分を認めた審判例もあります(大阪家審平6・11・2)。

2 寄与分が認められるための要件

財産管理型の寄与分については、以下の点に注意が必要です(片岡武他編『新版家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』339頁)。

①財産管理の必要性があることが必要です。

したがって、管理会社が賃貸不動産を管理している場合に、相続人の1人が不動産の清掃や手入れなどしたとしても、寄与分は認められません。

②特別の貢献が必要です。

親族間には扶助義務があるため、通常期待される範囲を超える貢献であることが必要とされています。
そこで、被相続人の不動産について、たまに手入れをしているという程度では寄与分は認められません。

③無報酬またはこれに近い状態で管理を行う必要があります。

相続人が、被相続人の建物の管理を行う一方、建物に無償で居住しているなどという場合には、賃料相当額について恩恵を受けていることになるので、事案によりますが、寄与分は認められづらいと考えられます。

④継続性が必要です。

2、3か月間だけ貸家の管理を行ったという程度では、寄与分は認められません。

⑤寄与行為により遺産が維持又は増加したことが必要です。

3 寄与分額の算定方法

寄与分額は、第三者に委託した際の報酬額が目安になります。
ただし、専門家ではなく、身内が管理を行う場合には、一定程度減額されることもあります。
一方、身内が第三者に委託して被相続人の財産管理を行う場合もありますが、このような場合には、実際の支出額が基準になるものと考えられます。

上記を目安として、一切の事情を考慮して調整のうえ、最終的な寄与分が算定されます。

なお、相続人の1人が財産管理のために不動産を無償で利用していた場合には、賃料相当額を控除して寄与分額を算出することになります。
また、相続人の1人が被相続人の資金を運用して利益を得た場合でも、相続人間の衡平の観点から、当該相続人には寄与分は認められないことが多いと思われます。


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