遺産分割では不動産の評価額はどうすべきでしょうか

1 はじめに

 不動産の評価額は、時間とともに変わっていくものです。遺産分割の対象に不動産が含まれている場合、不動産を分割するために、不動産の価額をどのように評価するのかという疑問が生じます。そのため,ある不動産の価額をどのように評価するのかは、いつを基準としていくらで評価して分割するかを決めなければなりません。
 今回は、不動産の評価をする際の基準時や評価方法の決定をどのようにするのかを解説します。

2 不動産の評価の時点

 まず、遺産分割において、不動産はいつの時点の価格で評価されるのでしょうか。
 これは、基本的に不動産の評価は遺産分割時の価格とされています。この点、相続開始時を基準とすると、被相続人が亡くなってから遺産分割時までは長期間にわたることが多く、その間に財産価格が変わってしまうため、相続人間の公平になるよう遺産分割時とされているのです。
(なお、相続税申告については、遺産分割とは異なり、財産評価基準時点は、相続開始時(死亡時)になりますので、注意が必要です。)
 次に遺産分割時の価格をどのように評価するのかを解説します。

3 一般的な不動産の評価方法

 そもそも、実際の評価や査定は、不動産鑑定士などの専門家に依頼することが多いですが、まずは色々ある不動産の評価方法を簡単に解説します。

(1)公示価格(地価公示価格)

 公示価格とは、全国の標準地について定められる地価であり、国が適正であると認めた土地の評価額のことです。
 公示価格は、国土交通省の土地鑑定委員会が定めており、毎年改定され、3月下旬頃に公表されます。
 そして、上記委員会が地価公示法に基づき一般の土地取引に指標を提供するとともに、相続税評価及び固定資産税評価の基準とされています。
 なお、その評価方法については、原則として、価格の三要素である市場性、収益性、費用性からアプローチする取引事例比較法、収益還元法、原価法の3方式を総合して算定するものです。

(2)都道府県地価調査標準価格(地価調査標準価格)

 都道府県知事が、国土利用計画法施行令に基づき特定の基準地について毎年7月1日を基準日として公表している価格です。評価方法は公示価格と同様です。

(3)固定資産税評価額

 固定資産税評価額とは、土地家屋課税台帳等に登録された基準年度の価格又は比準価格で、不動産の固定資産税を課税する際の基準となるものです。
 固定資産税評価額は、市町村が発表しており、3年ごとに改定されるので、相続が起こった年の該当年度のものを利用する必要があります。
 また、3年の間に土地価格の下落や上昇が起こることがあるので、各年度において時点補正率による補正が行われます。
 そして、固定資産税評価額は、公示地価や実勢価格の7割程度になることが多いです。
 固定資産税評価額を知りたい場合には、その不動産が所在する市町村役場(東京都の場合では、都税事務所)で固定資産評価証明書を取得することによって確認することができます。

(4)相続税評価額(いわゆる路線価)

 相続税評価額とは、相続税算定の基準として用いられている不動産の評価です。
 なお、路線価というのは、市街地の道路に面した宅地の1平方メートルあたりの価格のことです。
 そのため、路線価で計算できるのは土地の評価額のみです。
 また、路線価は毎年改定されます。
 路線価は実際に実勢価格や公示地価の8割程度の価格になり、土地の取引をした場合の実勢価格や公示価格より低くなります。

(5)実勢価格

 実勢価格とは、実際に不動産が市場で取引される場合の評価額のことです。
 ただ、実際にその不動産が取引される価格を決めるのは難しいです。
 購入希望者が多ければ高額で取引されますし、良い不動産とされるものでも、購入希望者がなかなか見つからなかったり売り急いだりする場合には値段が下がることもあります。
 また、不動産の査定を行う業者によっても、大きく査定金額が変わり、同じ不動産でも数百万円以上もの金額の差が発生することもあります。

4 遺産分割における不動産の評価方法

 このように、不動産の評価方法は多種多様であり、状況に応じて使い分けることになります。
 遺産の中に不動産が含まれている場合には、その不動産をどの基準で評価するかで大きく遺産の価値が変わることになってしまいます。
 次に、遺産分割の際にはどのような評価方法で不動産を評価することになるかを解説します。

(1)実勢価格が基準

 
 この場合、通常は実勢価格を基準にします。不動産を実際に処分する場合には実勢価格によることになるので、実勢価格で評価することが現実に即しているからです。
 ただし、相続人全員が別の評価方法(たとえば相続税評価額など)によることに合意している場合には、その評価方法を使うこともできます。
 なお、建物価格は固定資産税評価額が利用されることが多いです。これは、一般的には建物価格は土地価格と比較して価格が安く、不動産価格のうちに占める建物のウエイトは低い場合が多いからです。

(2)不動産業者に査定を依頼

 不動産の実勢価格を調べたい場合、簡単な方法は、不動産業者に不動産の簡易査定をしてもらう方法です。
 ただし、依頼する不動産業者によって、査定額に差が出るのはよくあることです。
 不動産を相続する人はなるべく低い査定書を出してきますし、不動産を相続しない人はなるべく高額な査定書を出してきます。そこで、このような場合には間をとって計算するなどしてバランスをとることが多いです。

5 終わりに

 このように、遺産分割での不動産の評価は専門性の高いものです。
 専門家以外の人がこれを実際に行うのは難しく、遺産分割でもかえって混乱を招いてしまうため、実際に不動産の相続、遺産分割のときには弁護士などの専門家のアドバイスを受けるようにすることを強くお勧めします。


遺産分割についてのその他のQ&A