限定承認とはなんでしょうか

1 限定承認とは

限定承認とは、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることをいいます(民法922条)。

2 限定承認の申述受理申立

限定承認は、共同相続人全員で行う必要があります(民法923条)。
ただし、相続放棄をした者がいる場合には、これを加える必要はありません。

相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、相続財産の目録を作成の上、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に限定承認の申述受理申立てを行う必要があります(民法924条)。

なお、一部の相続人が、3カ月の熟慮期間を徒過した場合でも、他の相続人が熟慮期間内であれば、相続人全員で限定承認の申述をすることができると考えられています。

相続人の財産が調査してもわからない場合には、申述書にその旨を付記すれば足りると考えられています。

3 申述の受理

 
限定承認を行った場合、限定承認者は、相続財産の管理を継続する必要があります(民法926条1項)。
相続人が数人ある場合には、家庭裁判所により、相続人の中から相続財産管理人が選任され(民法936条1項)、相続財産管理人が、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為を行うことになります(民法936条2項)。
家庭裁判所は、申述が適法と認めるときは、申述を受理します。

4 限定承認後の清算手続

限定承認では、限定承認者による精算手続きが行われます。

(1)債権者等に対する公告・催告

限定承認者は限定承認をした後5日以内に(相続財産管理人が選任された場合には、選任後10日以内に)、すべての相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定期間(最低2ヶ月)以内にその請求の申出をすべき旨を官報に公告する必要があります(民法927条1項、4項)。

また、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければなりません(民法927条3項)。

公告期間内に申し出を行わず、かつ限定承認者に知れていない相続債権者及び受遺者は、残余財産についてしかその権利を行使することができなくなります(民法935条)。

(2)限定承認者による弁済と換価

限定承認者は、上記期間満了前は、弁済を拒むことができますが(民法928条)、上記期間経過後は、相続財産をもって、相続債権者および受遺者に弁済することになります。

弁済順位としては、①優先権を有する債権者、②相続債権者、③受遺者、④公告期間内に申し出を行わず、限定承認者に知れていない相続債権者及び受遺者の順になります(民法929条、931条)。

相続債権者等に対して弁済をするにつき、相続財産を売却する必要があるときは、競売によって換価する必要があります(民法933条)。


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