遺留分侵害額請求の期限はいつまでですか

1 遺留分侵害額請求権の法的性質

 改正前相続法では、遺留分について、遺留分減殺請求権という構成がとられていました。
 この遺留分減殺請求権が行使されると、遺留分減殺請求権の範囲で、贈与や遺贈といった遺留分侵害行為の効力は消滅し、目的物上の権利は当然に遺留分権利者に復帰すると解されていました。
 これに対し、改正法は、遺留分侵害額請求の意思表示によって、遺留分侵害額に相当する金銭の給付を目的とする金銭債権が生じると構成したのです(民法1046条1項)。
 このように、遺留分請求権の法的性質は、物権的権利から金銭債権に変更したのです。

2 遺留分侵害額請求権の消滅時効

 遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。また、相続開始の時から10年を経過したときも消滅します(民法1048条)。
 この規定は、改正前相続法の遺留分減殺請求権の消滅時効と同じです。この1年の消滅時効は、形成権としての遺留分侵害額請求権そのものの時効で、次に述べる金銭債権の時効とは別のものです。

3 遺留分侵害額請求権の行使により生じた金銭債権の消滅時効

 改正前相続法では、遺留分減殺請求権は物権的権利と解されていたので、形成権としての遺留分減殺請求権を行使すれば、目的物の権利は当然に遺留分権利者に復帰し、例えば、遺留分減殺請求による目的不動産の所有権移転登記請求権等の期限はありませんでした。
 これに対して、改正法の遺留分侵害額請求権は、金銭債権ですから、通常の金銭債権と同様に消滅時効にかかることになりました。そして、その期間は、改正債権法では、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年の消滅時効にかかることになったのです(民法166条1項1号)。
 この点は、改正法での大きな変更ですので、気をつけておく必要があります。


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