相続債権者と相続人債権者

 「相続債権者」と「相続人債権者」という言葉は大変よく似ていますが違いがあります。
 「相続債権者」とは、被相続人に対する債権者、すなわち、債務者たる被相続人に対して債権を有している債権者のことをいいます(民法927条、933条、935条、937条、957条など)。「相続債権者」という語は、法文上の用語であり、いわゆる講学上の用語でもあります。「相続人債権者」とは、相続人に対する債権者、すなわち、債務者たる相続人に対して債権を有している債権者のことをいいます。「相続人債権者」は、法文上の用語ではなく、いわゆる講学上の用語です。なお、同じ意味の講学上の用語として「固有債権者」という語を用いる論者もいます。
 相続債権者は、もともと被相続人の有していた財産を引き当てとして回収を図るための手段を有していましたが、被相続人の債務を相続人が承継したとして、相続人(その固定財産)に対しても請求しうる立場をも持つこととなりました。
 それに対し、相続人債権者は、もともと債務者の所有する財産を引き当てとして回収を図る手段を有していましたが、債務者が相続人となった場合には、被相続人の財産(遺産)について債務者が相続人としてもっている遺産共有持分についても回収を図る途が生じたことになります。