受託者にはどのような義務がありますか

1 はじめに

受託者には、主な義務として、善管注意義務、忠実義務、公平義務、分別管理義務、報告義務・帳簿作成義務などがあります。
なお、これら多くの義務について、信託行為に別段の定めをすることも可能ですが、一定の義務については、信託行為によっても免除することはできません。

2 善管注意義務

受託者には、善良な管理者としての注意義務が課せられています(信託法29条2項)。
この善管注意義務は、受託者が属する社会的・経済的地位や職業等を考慮したうえで、その類型に属する者に対して一般的・客観的に要求される注意能力を基準として判断されると考えられています。
したがって、受託者が近親等の個人が行う場合と、信託銀行等が行う場合とを比較した場合、前者より後者のほうが高度の注意義務が課せられているということができます。

3 忠実義務

受託者には、受益者のため忠実に信託事務の処理を負う義務が課せられています(信託法30条)。
この忠実義務とは、受託者はもっぱら受益者の利益を図らなければならず、自己の利益を図ってはならないという義務のことを指し、具体的な内容として、利益相反行為の禁止と、競合行為の禁止も定められています。

(1)利益相反行為の禁止

受託者は、利益相反行為をしてはいけません(信託法31条)。
具体的には、以下のような行為をしてはいけませんが、信託行為に定めのある場合など、特別な事情がある場合には、許容されます。
①信託財産に属する財産を固有財産に帰属させたり、固有財産に属する財産を信託財産に帰属させること。
②信託財産に属する財産を他の信託の信託財産に帰属させること。
③第三者との間において信託財産のためにする行為であって、自己が当該第三者の代理人となって行うもの
④信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定することや、その他第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの

(2)競合行為の禁止

受託者は、受益者の利益に反するものについては、固有財産の計算でしてはいけません(信託法32条)。
しかし、信託行為に定めのある場合など、特別な事情がある場合には、許容されます。

4 公平義務

受益者が2人以上いる場合には、受託者は、公平にその職務を行わなければなりません(信託法33条)。
ただし、信託行為において、受益者Aには毎月5万円を渡し、受益者Bには毎月3万円を渡すと定められた場合に、これに従うことが公平義務に反するものではないことはもちろんです。

5 分別管理義務

受託者は、信託財産に属する財産と固有財産や他の信託の信託財産に属する財産とを、分別して管理しなければなりません(信託法34条)。
したがって、不動産については、信託の登記によってこれを行うことになりますし、預金なども信託であることが分かる別の口座において管理する必要があります。

6 報告義務・帳簿作成義務

受託者は、受益者の求めに応じて、信託事務の処理の状況や信託財産に属する財産又は信託財産責任負担債務の状況について報告をする必要があります(信託法36条)。
また、受託者は、信託財産に係る帳簿を作成しなければなりません(信託法37条)。


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