受益者にはどのような権利がありますか

1 受益者とは

受益者とは、受益権を有する者をいいます(信託法2条6項)。
また、「受益権」とは、①信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(受益債権)と、②これを確保するために受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利(単独受益者権)をいいます(信託法2条7項)。
①が株式でいうところの自益権にあたり、②が共益権にあたります。

信託設定時に、委託者が受益者を定めることが通常ですが、信託行為において、受益者を指定し、またはこれを変更する権利を有する者(受益者指定権者)を定めることもできます(信託法89条)。

2 受益債権

受益債権をどのような内容にするかこそ、信託設定においてもっとも重要な点と言えますが、信託法上特段の規定はありません。
この自由さこそ、信託の幅広い可能性を示すとともに、一方で、信託がイメージしづらい、なじみづらいものになっているような気がします。

受益債権に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみが責任財産となり(信託法100条)、受託者の固有財産は責任を負いません。
また、受益債権は、信託債権(信託財産責任負担債務(受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務。信託法2条9項)に係る債権であって、受益債権でないもの。信託法21条1項2号)に劣後します(信託法101条)。

3 単独受益者権

受益者は、自らの権利を確実に保護するため、受託者等に対する監督する権利(単独受益者権)を有しており、信託行為において別段の定めをしても、制限をすることができないとされています(信託法92条)。
この単独受益者権は、受益者代理人が選任されていても、受益者自身が行使することができます(信託法139条4項)。

単独受益者権の具体的な内容の主なものは、以下のとおりです(信託法92条)。
①受託者の権限違反行為の取消権(信託法27条)
②受託者の利益相反行為の取消権(信託法31条)
③信託事務の処理の状況に対する報告請求権(信託法36条)
④帳簿等の閲覧等請求権(信託法38条)
⑤受託者に対する損失てん補請求権(信託法40条)
⑥受託者の行為の差止請求権(信託法44条)

以上のように、信託法では、原則として、受託者への監督は受益者が行うことが想定されていますが、福祉型信託などで、受益者自身に、監督が期待できないような場合には、別途信託代理人を選任するなどする必要があります。

4 受益権の譲渡等

受益権は自由に譲渡や質入れすることができるのが原則です(信託法93条、96条)。
しかしながら、遺言信託や遺言代用信託の場合には、信託行為に別段の設定をして、譲渡や質入れを禁止することが通常です

5 受益権の放棄

受益者は、受託者に対し、受益権を放棄する旨の意思表示をすることで、受益権を放棄することが可能です(信託法99条)。


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