遺言執行者は相続人に対してどのような権利義務がありますか

1 遺言執行者は相続人の代理人

遺言執行者は、相続人の代理人であり、相続人を委任者として職務を行うと考えられています(民法1015条)。
そして、遺言執行者の相続人に対する権利義務については、委任の規定が準用され(民法1012条2項)、相続人に対しては以下のような権利義務を有すると考えられます。

2 遺言執行者の権利

① 費用償還請求権(民法650条2項)

遺言執行者が、遺言執行のために必要と認められる費用を支出したり、債務を負担したときは、相続人に対し、その費用の償還を求め、または、代わりに弁済をすること求めることができます。また、遺言執行者が遺言執行のため過失なく損害をうけたときは、相続人に対し、その賠償を請求することができます。
ただし、遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担となるため、相続財産以上に遺言執行費用を要したとしても、相続財産の額を超える費用を相続人に請求することはできません(民法1021条)。

② 報酬請求権(民法1018条1項)

遺言者が遺言に報酬を定めれば、遺言執行者はその報酬を請求することができ、また、遺言に定めがなくとも、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができます。
以上の費用や報酬は、実際に相続人に請求される例は少なく、相続財産の中から支出されることが通常といえます。

3 遺言執行者の義務

① 善管注意義務(民法644条)

遺言執行者は、善良な管理者としての注意義務をもって、遺言執行を行わなければなりません。
なお、注意義務の程度は、遺言執行に要求される専門的知識や執行者の能力、性質に応じて異なると考えられており、たとえば、弁護士が遺言執行者になった場合には、弁護士としての専門的知識、能力に応じた注意義務を負うと考えられています。

② 目録作成義務(民法1011条)

遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません。また、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければなりません。
なお、遺言が財産に関するものではない場合、財産目録を作成する必要はないと考えられています。
また、財産目録については、相続財産を特定できる程度で足り、個々の財産の評価額をすべて記載する必要はないと考えられています。
さらに、遺留分を有しない相続人であっても、相続財産目録の交付義務はあると考えられています。

③ 報告義務(民法644条)

遺言執行者は、相続人の請求があるときは、いつでも遺言執行の状況を報告し、遺言執行が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければなりません。

④ 受取物等の引渡義務(民法646条)

遺言執行者は、遺言執行をするに当たって受け取った金銭その他の物や収受した果実、相続人のために遺言執行者の名で取得した権利を相続人に引き渡し、また、移転しなければなリません。

⑤ 補償義務(民法647条)

遺言執行者は、相続人に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければなりませんし、この場合において損害があるときは、損害賠償責任を負います。


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