藁の上からの養子は相続人になりますか

1 藁の上からの養子とは
藁の上からの養子とは、他人の子を実子として出生届をして育てることをいいます。
藁とは産褥に敷く藁のことで、出産直後の子を他人が貰い受けて自分たちの子として育てることをいいます。
日本では古くから行われていたと言われています。

このように、藁の上からの養子には、血縁関係はないのですが、戸籍上は実子として記載されることになります。

2 藁の上からの養子が相続人になるか
(1)相続人間で了解している場合
この藁の上からの養子は、育ての親が死亡した場合、相続人になるのでしょうか。

この点、遺産分割協議や遺産分割調停において、相続人の範囲を確定する際、通常は戸籍の記載に沿って行います。
そこで、仮に藁の上からの養子であっても、相続人間で実子と取り扱ってよいと考えているのであれば、戸籍の記載を尊重して相続人として取り扱ってしまうことも多いと思われます。

(2)相続人間で争いがある場合
それでは、相続人間で、藁の上からの養子が相続人か否かが争いになった場合はどうでしょうか。

この場合、遺産分割調停では決着をつけることができず、親子関係存否確認訴訟等によって決着をつけることになります。
そして、当該訴訟によって親子ではないと判断された場合には、親子関係はないものとなります。

親子関係の存否については、生物学上の父子関係だけで決められるわけではありません。

嫡出推定期間内に出産した子については、妻が子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われていたり、遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合でないと、親子関係存否確認訴訟を提起することすらできません(最判平成12年3月14日)。
DNA検査の結果により生物学上の父子関係が認められないというだけでも、訴えは認められません(最判平成26年7月17日)。

上記を満たしたうえで、さらに生物学上の親子関係が認められないことが必要です。

ただし、仮に生物学上の親子関係が認められなくとも、以下のような事情を考慮して、権利濫用として、親子関係の不存在が認められない可能性もあります(最判平成18年7月7日)。
①育て親と子どもの間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ
②判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより子及びその関係者の被る精神的苦痛、経済的不利益
③改めて養子縁組の届出をすることにより子が育て親の嫡出子としての身分を取得する可能性の有無
④請求者が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的
⑤実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に請求者以外に著しい不利益を受ける者の有無等

なお、実親子関係が認められない場合に、実子としての出生届の提出をもって、養子縁組の届出とみて、実親子関係はなくとも、養親子関係があるとの主張も考えられますが、これは判例上、認められていません(最判昭和50年4月8日)。


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