被後見人が遺産を取得する場合の注意点はなんですか

1 被後見人が相続人になる

被後見人の親族が死亡し、被後見人が相続人となることはよくあるケースです。

この場合、後見人は、被後見人に代わって、遺産を適切に取得するよう活動する必要があります。
以下では、ケースごとの注意点を述べます。

2 被相続人が債務超過の場合

被後見人の親族が死亡し、被後見人が相続人となった場合、まず行うべきは、被相続人の財産調査です。
そして、財産調査の結果、被相続人が債務超過の場合には、後見人としては、相続が開始を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に対し相続放棄の申述を行います(民法915条1項)。
これにより、被後見人が債務を承継しないようにします。

3 遺産分割協議を行う必要がある場合

被相続人の財産調査の結果、財産があることが判明した場合には、相続人間で遺産分割協議を行う必要があります。
後見人も、被後見人に代わって、遺産分割協議に参加する必要があります。
特に、被後見人の財産が少なく、生活費や病院の費用等で、早期に遺産を取得する必要がある場合には、後見人が積極的にその他の相続人に対して、遺産分割協議を呼び掛ける必要がある場合もあります。

後見人が、遺産分割協議を行おうという場合、原則としては、被後見人が法定相続分を確保できるように協議を行う必要があります。
当事者同士で遺産分割協議を行う場合、法定相続分にとらわれず、柔軟な解決を行うことも多いですし、被後見人が自ら考えられたのであれば、法定相続分にこだわらない解決をしたと思われる場合であっても、一般的には、後見人の善管注意義務からすれば、法定相続分を確保して協議を行っておいたほうがいいでしょう。
安易に法定相続分を下回った割合で遺産分割協議を成立させると、後に善管注意義務違反による損害賠償の対象になることもありえるため注意が必要です。

なお、類似の事件として、特別代理人が未成年者にとって不相当な内容の遺産分割協議を成立させた場合の善管注意義務違反が認められた事案(広島高岡山支判平23年8月25日)があります。

また、後見人が、遺産分割協議により取得する財産としては、相続財産が被後見人の自宅などという場合でなければ、預貯金等の流動性の高い資産が望ましいと考えられます。

4 遺言により遺産を取得する場合

被相続人が遺言を遺している場合には、後見人としては、遺言内容に沿って遺産を取得する必要があります。
遺言が自筆証書遺言の場合、後見人としては、検認の手続を行う必要があります。

5 遺言により他の相続人が遺産を取得する場合

遺言の内容が、他の相続人に対して遺産を相続させるといった内容である場合、後見人としては、被後見人の遺留分が侵害されているかどうかを確認する必要があります。
そして、被後見人の遺留分が侵害されている場合には、遺留分減殺請求権を行使する必要があります。
遺留分減殺請求権の行使後は、相続人と協議を行い、遺留分を確保することが必要となります。

なお、被後見人が自ら考えられたのであれば、遺留分減殺請求権を行使しそうにないという場合であっても、後見人の善管注意義務を考えた場合、一般的には、遺留分減殺請求権を行使しておくほうが無難といえます。
また、遺留分の取得割合について相続人と協議を行う場合にも、後見人としては、法律上定められた遺留分割合に沿って協議を行う必要があると考えられます。

この場合も、安易に遺留分減殺請求権の行使を行わなかったり、法律上の遺留分割合より安易に妥協した場合には、後に善管注意義務違反による損害賠償の対象になることもありえます。


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