成年後見人にはどのような権限がありますか

1 成年後見人の権限

成年後見人には、成年被後見人に関する取消権と包括的代理権が付与されます。

2 取消権

通常の成人が法律行為を行った場合、特段の事情がない限り、当該法律行為を後になって取消しなどできないのが原則です。

しかしながら、成年被後見人に選任されると、成年被後見人の法律行為は、原則として、成年被後見人や成年後見人が取消すことが可能になります(民法9条・民法120条)。
このように、成年被後見人の法律行為を取消すことができるのは、成年被後見人を保護するためです。

実際に、被後見人が後見人の同意なく不必要なものを購入したなどとして、後に取消権を行使しようという場合には、取引の相手方に対して、内容証明郵便を送付するなどの方法が考えられます。

ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取消すことはできません(民法9条)。
「日常生活に関する行為」は、個々人の資産等、収入、生活状況等、具体的な事情を考慮して判断するものと考えられており、被後見人の資産状況や生活状況によって、異なる可能性があります。

法律行為の相手方が、いくら成年被後見人であったことを知らなかったとしても、成年後見人らは当該法律行為を取消すことができます。

したがって、成年後見人が保有する不動産を処分したり、賃貸するなどという場合には、成年被後見人と単独で契約したとしても、のちに当該契約は取消される可能性がありえます。

なお、仮に成年後見人が成年被後見人の法律行為に対して、事前に同意をしていたとしても、後に取消権を行使することは可能と考えられています。
また、成年被後見人が行った法律行為が特に成年被後見人にとって不利益ではないような場合には、成年後見人はこれを追認して有効な法律行為とすることができます。

3 代理権

成年後見人は、成年被後見人の財産に関する法律行為について被後見人を代理することになります(民法859条1項)。
したがって、成年後見人は、被後見人に代理して、単独で成年後見人の法律行為を行うことができることになります。

ただし、以下のような行為は代理することができません。
・被後見人が居住する不動産を処分する場合には、あらかじめ家庭裁判所の許可を得る必要があります(民法859条の3)。詳しくは、「成年後見人が不動産を処分する際に注意すべきことはなんですか」をご覧ください。
・被後見人の雇用契約を締結するなど、被後見人の行為を目的とする債務を負担する法律行為を行うことはできません(民法859条2項)。
後見監督人が選任されている場合には、営業又は民法13条1項各号に掲げる行為をするときは、後見監督人の同意を得る必要があります。
・後見人と被後見人の利益相反行為については、特別代理人を選任する必要があります。詳しくは、「後見人は利益相反行為をすることができますか」をご覧ください。
・婚姻、離婚、養子縁組遺言などの身分行為は行うことができません。

4 成年後見人の職務

民法858条は、「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」と定められています。
ここから分かるように、民法では、成年後見人の職務として、身上監護と財産管理があることを前提としています。

そして、成年後見人には、この身上監護と財産管理について、成年被後見人の意思を尊重し、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないという身上配慮義務が課せられています。

5 身上監護

成年後見人の身上監護事務としては、介護サービスの契約締結、介護保険の認定申請、住宅の確保や維持管理に関する契約締結、医療契約の締結が代表的です。
ただし、実際に、成年被後見人を介護するなどといった事実行為については、身上監護の範囲には含まれないと考えられています。

6 財産管理

成年被後見人の財産全体を把握し、管理や利用することです。詳しくは、「成年後見人はどのように財産管理を行う必要がありますか」をご覧ください。


成年後見についてのその他のQ&A