後見人は利益相反行為をすることができますか

1 利益相反行為とは

利益相反行為とは、後見人にとって利益となるが被後見人にとって不利益となるというように、後見人と被後見人の利害が相反する行為をいいます。
被後見人の財産を後見人に贈与するなどといった場合が典型例です。

後見人が利益相反行為を行う場合、後見人に適正な代理権の行使が期待できないため、特別代理人を選任する必要があります(民法860条・826条)。
ただし、後見監督人が選任されている場合は、後見監督人が被後見人を代表するため(民法851条4号)、特別代理人の選任は不要です(民法860条但書)。

2 特別代理人

特別代理人は、後見人、親族その他利害関係人が、後見開始の審判をした家庭裁判所に対し、申立を行い、選任を受けます。

後見人が、利益相反行為について、特別代理人の選任なくこれを行った場合には、無権代理となります。
したがって、被後見人の追認がない限り、効力を生じないことになります。

3 利益相反行為の具体例

利益相反行為となるかどうかは、行為自体を外形的客観的に考察して判定すべきであり、後見人の動機や意図をもって判定すべきではないと考えられています(最三小判昭和42年4月18日)。

利益相反行為の具体例は以下のような行為です。
遺産分割協議において、複数の被後見人に対して同一の後見人が選任されている場合
 たとえば、複数の未成年者が相続人で、同じ親権者がいる場合ですが、このような場合、後見人は一人の被後見人の代理しかすることはできず、それ以外の被後見人には特別代理人の選任が必要になります。

②遺産分割協議において、後見人と被後見人がいずれも相続人である場合
 たとえば、親子ともに相続人である場合であるが、このような場合、被後見人に特別代理人を選任する必要があります。

③後見人と被後見人がいずれも相続人である場合で、被後見人が相続放棄をする場合
 この場合も、被後見人の相続放棄により、後見人は利益を得ると考えられるため、被後見人に特別代理人を選任する必要があります。ただし、後見人自身も被後見人とともに相続放棄をする場合には、利益相反行為には該当しないと考えられています。

④後見人が借入れを行うにあたり、被後見人所有の土地を担保に入れたり、被後見人を保証人とする場合
 この場合、仮に当該借入れが、被後見人のために用いられるものである場合であっても、利益相反行為に該当すると考えられています。
 逆に、被後見人が借入れを行うにあたり、後見人が連帯保証人になるような場合には、利益相反行為には該当しないと考えられます。

⑤第三者の金銭債務について、後見人が連帯保証及び担保設定をするとともに、被後見人も連帯保証及び担保設定をする場合
 この場合も、被後見人の連帯保証や担保設定により、後見人は求償割合や代位などの点で利益となると考えられるため、利益相反行為に該当すると考えられています。

逆に、利益相反行為に該当するか否かは、行為の外形から判断されるものと考えられているため、
後見人が自身で使用する意図で、被後見人が借入行為を行うような場合には、利益相反行為には該当しないと考えられています。
ただし、このような行為は、成年後見人の身上配慮義務または善管注意義務に反するものであり、解任事由になったり、後に損害賠償請求を提起される可能性がありえます。


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